収録専門用語目次:ラッサ熱
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ラッサ熱
ラッサ熱はラッサウイルスによって起こる感染症で主に西アフリカの一部地域でみられます。多くは軽い症状で経過しますが病状が進むと出血や臓器障害などを伴って重症化することがあり早い気付きと適切な医療管理が重要になります。感染源は野生のネズミが中心であり生活環境と医療現場の両方で対策の考え方が変わる点も特徴です。蜂の巣調査や倉庫や屋根裏の確認のように人がふだん入らない場所へ立ち入る場面ではネズミの痕跡にも注意し感染症の知識をあわせて持っておくと安全管理に役立ちます。
1.ラッサ熱ウイルスと媒介者
●ラッサウイルス
ラッサウイルスはアレナウイルス科に分類されるRNAウイルスでラッサ熱の原因となります。人に入ると発熱などの全身症状から始まり体の状態しだいで重い合併症へ進むことがあります。初期にはかぜのように見えることもあるため流行地域での滞在歴やネズミとの接触可能性をあわせて考えることが大切です。
●自然宿主とネズミ
自然界ではナタールアカネズミなどのげっ歯類がウイルスを保有し尿や糞にウイルスを排出します。人は排泄物で汚れた環境や食品に触れることで感染する可能性が高まります。室内や物置や天井裏でネズミの糞やかじり跡や足音が続く時は衛生面の問題だけでなく感染症予防の観点でも放置しないことが重要です。
2.伝播と感染
●直接接触と食物を介した感染
感染したネズミの尿や糞で汚れた食物や生活用品に触れたりそれが口に入ったりすることで感染が起こり得ます。住環境でネズミが出入りしやすい状態が続くと汚染の機会が増えて危険が上がります。台所や食品庫や倉庫で袋が破られている時や粉状の食品に糞が混じる時や棚に黒い粒が点在する時はネズミの活動を疑う目安になります。
●人から人への感染
患者の血液や体液への接触で感染が広がることがあり医療現場では針刺しや処置中の曝露が問題になり得ます。そのため診療では標準予防策を徹底し体液に触れる可能性がある場面では防護具を適切に使う必要があります。家庭内でも重い症状のある人の体液へ直接触れることは避け医療機関の指示に従って対応することが大切です。
3.症状と経過
●軽度な感染
多くは発熱とだるさや頭痛や筋肉痛や悪寒などから始まります。経過の途中でのどの痛みや咳が加わることもあり吐き気や嘔吐や下痢や腹痛などの消化器症状がみられる場合もあります。初期症状だけでは他の感染症と見分けにくいため流行地域での行動歴やネズミとの接触可能性を思い出して伝えることが重要です。
●重篤な感染
一部では出血傾向や循環不全が起こり肝臓や腎臓などの臓器障害へ進むことがあります。状態が悪化すると呼吸困難や意識の変化などを伴い集中治療が必要になる場合があります。強い発熱が続く時や出血が疑われる時やぐったりして水分がとれない時は自己判断で様子を見続けず早めに医療機関へ相談することが重要です。
4.診断と治療
●診断
初期症状は他の感染症と区別しにくいため流行地域での滞在歴やネズミとの接触可能性や医療曝露の有無などを合わせて評価します。確定にはPCRなどの遺伝子検査や抗体検査が用いられ検体の取り扱いを含めて専門的な管理が必要です。受診時にはいつから発熱したかどの場所でネズミを見たか糞や尿へ触れた可能性があるかを具体的に伝えると判断の助けになります。
●治療
現時点では支持療法が中心になり脱水を防ぐ補液や電解質管理や出血や臓器障害への対応などで全身状態を支えます。重症化を防ぐためには早期に疑って医療につなげ適切な隔離と感染対策の下で治療を進めることが重要です。高熱が長引く時や強いだるさで動けない時や出血が混じる症状がある時は早めの受診が必要です。
5.予防と対策
●感染予防
ネズミが室内に入りにくい環境を整え食品は密閉して保管し排泄物が疑われる場所は適切に清掃します。食器や調理環境を清潔に保ちネズミが触れた可能性がある食品は避ける意識が基本になります。掃除の際は素手で触らず手袋を使い乾いたまま強く掃き散らさないよう注意して作業後は手洗いを徹底します。
●医療機関での対策
患者の血液や体液に触れる可能性があるため標準予防策を徹底し必要に応じて接触対策を強化します。針刺しの防止や器材の安全な処理を徹底し検体の取り扱いも含めて院内感染を防ぐ運用が重要です。疑わしい症状がある時は受付や受診時点で渡航歴や接触歴を伝えることが周囲への拡大防止につながります。
●ワクチンの開発
ワクチン開発は進められていますが広く利用できる形で確立した予防ワクチンはまだ限られています。そのため現時点では環境衛生と医療現場の感染対策が予防の中心になります。住まいの中でネズミの出入りが続く時や糞尿の痕跡が繰り返し見つかる時は自力対応だけで長引かせず害虫駆除業者へ相談する目安になります。侵入経路の封鎖や発生源の整理を進めることが再発防止にも役立ちます。
ラッサ熱は野生のネズミ由来の感染が基本にあり生活環境の衛生と食の管理が予防の出発点になります。一方で人から人への感染も起こり得るため医療現場では曝露を防ぐ手順を徹底し早期の疑いと検査と隔離を適切に進めることが拡大防止につながります。ネズミの痕跡がある環境へ入る時は手袋や長袖で身を守り作業後の手洗いと着替えを行い体調に変化が出た時は早めに医療機関へ相談することが大切です。