収録専門用語目次:オペラント反応
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オペラント反応
自分の行動の結果によってその行動が増えたり減ったりする学習のしくみを指します。たとえばある行動のあとに好ましい結果が起きるとその行動は起こりやすくなり反対に不快な結果が続くとその行動は起こりにくくなります。この原則は動物の行動研究だけでなく人の学習やしつけや教育や支援の場面でも広く使われています。重要なのは行動そのものより行動の直後に何が起きたかで次の行動の出やすさが変わる点です。行動は偶然に見えても結果との結びつきが繰り返されることで安定した習慣や反応の型へ変わっていきます。
1.オペラント反応の基本概念
行動の変化を理解するためには刺激に反射的に反応する仕組みとは別に自分の行動が環境へ働きかけその結果が返ってくる流れを見る必要があります。オペラント反応はその往復の中で形づくられる学習であり結果が行動を選び直させる点に特徴があります。
●スキナーの箱と強化
オペラント反応の考え方は行動主義心理学者B.F.スキナーが体系化しました。スキナーはスキナーボックスと呼ばれる装置を用いてたとえばラットがレバーを押すと餌が出るように設定し行動のあとに結果が続くと行動の起こり方が変化することを示しました。レバー押しの直後に餌が得られるとレバーを押す行動は繰り返されやすくなり結果として将来の同じ行動が増えることが確認できます。ここでは餌そのものよりも餌が行動の直後に出るという時間的な結びつきが重要であり行動と結果の近さが学習の成立を支えます。
●強化と弱化
オペラント反応では行動は強化によって増加し弱化によって減少するという見方をします。強化とは行動のあとに報酬や好ましい変化が生じたために行動が起こりやすくなることを指し弱化とは行動のあとに不快な結果が続いたり望ましい結果が失われたりして行動が起こりにくくなることを指します。同じ結果でもその個体にとって価値があるかどうかで働き方は変わるため外から見た結果の形だけではなく受け手の状態も考える必要があります。
2.オペラント反応の要素
行動の増減を左右するしくみは一つではなくどのような結果がどのような条件で続くかによって学習の速さや持続のしかたが変わります。ここでは基本となる要素を整理します。
●強化の種類
陽性強化は行動のあとに望ましい結果を加えることで行動が増える形です。たとえば片づけたあとに褒められると片づけが起こりやすくなります。陰性強化は行動のあとに不快な刺激や状況が取り除かれることで行動が増える形です。たとえばある操作をすると不快な音が止まる場合その操作が起こりやすくなります。どちらも行動が増える点は同じですが行動後に何が加わるか何が減るかが異なります。ここを取り違えると罰との区別があいまいになりやすいため注意が必要です。
●弱化の要因
罰は行動のあとに不快な結果や刺激が加わることで行動が減る形です。排除は行動のあとに望ましい結果が得られなくなることで行動が減る形です。たとえば以前は注目されていた行動が注目されなくなるとその行動が減っていくことがあります。ただし短期的に抑えられても別の場面で再び現れることがあり何を減らしたいのかと代わりにどの行動を育てたいのかを一緒に考えないと安定した変化につながりにくいです。
●スケジュール
強化スケジュールとは強化が与えられるタイミングや条件の決まりであり行動がどのくらい速く増えるかそしてどのくらい続きやすいかに影響します。たとえば固定比率では一定回数の行動ごとに強化が与えられ変動比率では回数が一定ではないため行動が粘り強く続きやすい傾向があります。間隔スケジュールでは一定時間ごとに強化が得られる場合や不規則な時間で得られる場合があり行動のパターンに違いが出ます。行動がすぐ増えることと長く続くことは同じではないため目的に応じたスケジュールの選択が重要になります。
3.オペラント反応と学習
オペラント反応は経験を通して行動を調整する学習の一部です。うまくいったときに得られる結果が行動を後押ししうまくいかなかったときの結果が行動を控えさせるため行動は環境に合わせて変化していきます。つまり学習とは知識が増えるだけでなく行動の選び方が変わる過程でもあります。
●学習のプロセス
行動は最初から完成した形で現れるとは限りません。偶然に起きた行動のうち環境に合うものが結果によって残りやすくなり合わないものが減ることで少しずつ整理されていきます。試行錯誤の中で有効な行動が見つかるとその行動が反復されやすくなりやがて安定した習慣として見えるようになります。ここでは結果が単なる評価ではなく次の行動を方向づける選択圧として働いています。
●形成と拡散
新しい行動は目標に近い小さな行動を段階的に強化することで形成されます。たとえば目的の動作に少し近づいた時点で結果を返していくと行動は徐々に完成形へ近づきます。そしてある場面で学んだ行動が似た場面にも広がることがありこれが拡散として理解されることがあります。ただし強化が得られなくなる状態が続くと行動は弱まりやすいためどの段階を評価するかとどの場面で結果を返すかの設計が大切になります。
4.応用と臨床
オペラント反応の原則は研究室の中だけでなく実際の支援や教育や治療でも活用されています。行動を変えたい時に本人の意思だけへ原因を求めるのではなく行動の前後にある条件と結果を整理することで現実的な調整がしやすくなります。
●行動療法
オペラント反応の原則は行動療法で活用され問題となる行動が起こる条件と結果を整理した上で望ましい行動が起こりやすい環境を作ります。具体的には望ましい行動を強化で増やし望ましくない行動は罰に頼りすぎずに結果の調整や支援の工夫で減らすことを目指します。行動だけを抑えるのではなく代わりにどの行動を選べるようにするかを考えることが安定した支援につながります。
●教育
教育の場面でも生徒の行動に続く結果を整えることで望ましい学習行動を増やし望ましくない行動を減らす手掛かりになります。行動が起きた直後に分かりやすいフィードバックを返すことや目標を小さく区切って達成しやすくすることが効果を支える要点になります。学習内容だけでなく取り組み方や継続のしかたにも結果が影響するためほめ方や課題の提示方法の違いが行動の維持に大きく関わります。
5.オペラント反応と社会学習
行動は自分が直接経験した結果だけで変わるとは限りません。他者の行動とその結果を観察することでも行動の選び方は変わります。そのためオペラント反応の理解は観察学習や社会的な影響を考える時にもつながります。
●社会学習理論
アルバート・バンデューラなどは他者の行動とその結果を観察することで学習が進むとする社会学習理論を示しました。ここでは自分が直接行動しなくても他者が褒められる場面や叱られる場面を見ることで強化や弱化に似た影響が生じると考えます。つまり結果の力は直接経験に限られず観察された出来事を通しても働くため社会の中で行動様式が広がる理由の説明にもなります。
●モデリング
モデリングは他者の行動を手本として取り込み自分の行動を変化させる過程です。手本となる人がどのような行動を取りその結果として何が起きたかが学習の方向を左右するため観察された結果が行動の選び方に影響します。手本が高く評価されている場合や結果が分かりやすい場合には模倣が起こりやすく行動の獲得が速く進むことがあります。
6.まとめ
オペラント反応は行動の結果が次の行動を変えるという学習の基本原理であり行動が強化で増え弱化で減るという枠組みで整理できます。スキナーの研究で示された考え方は強化の種類やスケジュールの違いによって行動の増え方と続き方が変わる点まで含めて理解すると実用性が高まります。そのため臨床心理学や教育そして社会学習の理解にもつながり行動を変えたい場面で何を結果として用意するかを考える重要な手掛かりになります。望ましい行動を増やすには単に注意するよりも行動の直後にどのような経験が返るかを見ることが大切であり環境調整の視点を持つことで支援の精度も高まりやすくなります。